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2017.11.13 [インタビュー]
数多いボクシング映画に対抗できるアプローチを見つけた『スパーリング・パートナー』

スパーリング・パートナー

©2017 TIFF

eiga.com

 
東京国際映画祭公式インタビュー 2017年11月2日
コンペティション部門『スパーリング・パートナー
サミュエル・ジュイ(監督)、マチュー・カソヴィッツ(俳優)、ソレイマヌ・ムバイエ(俳優)
 
数多いボクシング映画に対してこの主題でいけば違うアプローチができると思った
 
40歳代半ばを迎え、盛りを過ぎてもボクシングが好きでたまらない落ち目のボクサーが、家族を養うためにトップ選手のスパーリング・パートナーを志願する――。『憎しみ』などの問題作を監督し、俳優としても『アメリ』などで個性を発揮するマチュー・カソヴィッツが主演。本格的にボクシングを訓練し、中年ボクサーの悲哀と家族に対する情を演じ切る。俳優出身で、脚本・監督を担当したサミュエル・ジュイは本作がデビューとなる。
 
 
――この作品が生まれたきっかけを教えてください。
 
サミュエル・ジュイ監督(以下、ジュイ監督):ボクシング映画は数が多いのに、スパーリング・パートナーという存在がこれまで取り上げられてこなかったことに気づきました。実際、ボクシングにおいて、スパーリング・パートナーはとても重要なのです。ボクサーが試合の準備をするために支える役割ですから。ボクシングに対してこれまでの映画と違う視点でアプローチができると考えました。と同時に、父親が子供に何を伝えることができるかというのもテーマのひとつです。
 
――主演にカソヴィッツを選んだ理由を聞かせてください。
 
ジュイ監督:彼から主演にしろと脅されましてね(笑)。実は、主人公をイメージしたときに、マチューと重なる部分が多かったのです。隣にいる人間を褒めちぎるのも良くないけれど、よい俳優というのは、シナリオのプラスアルファになる何かを加えてくれる人です。マチューはそういう俳優だと思います。
スパーリング・パートナー
 
――出演の話を聞いてどう思いましたか?
 
マチュー・カソヴィッツ(以下、カソヴィッツ):このシナリオは家族の物語がとても上手に描かれていて、とりわけ父と娘の関係が非常に細やかに設定され、そこに興味を惹かれました。なによりボクシングにチャレンジができるということが、私にとっての第一のモチベーションになりました。
スパーリング・パートナー
 
――ボクシングは既に習っていたのですか?
 
カソヴィッツ:いや、この映画の出演が決まったときにボクシングの基礎から習いました。また、試合も経験しました。撮影終了後に試合をして結果は引き分けでしたがね。
 
――すごいですね! あなたは監督としても知られていますが、監督の演出にコメントはありますか?
 
カソヴィッツ:俳優と監督は分けて考えています。俳優であるときはそれに徹して、演出にはまったく口出しをしません。
 
カソヴィッツは監督経験があるので前向きなプレッシャーになった
 
――監督は、監督経験のあるカソヴィッツには普通の俳優と同じように接したのですか?
 
ジュイ監督:彼は俳優に徹してくれました。当然、私の監督の仕方に対して考えもあったでしょうが、口には出しませんでした。そのことは、私にとって前向きなプレッシャーになりました。自分なりの映画を作らなくてはいけないという励ましになりました。
 
――ボクシング・シーンの迫力は、実際のボクサーであるソレイマヌ・ムバイエさんの影響は大きかったと思うのですが。
 
ジュイ監督:彼の存在は重要でした。リングの上では本当に戦ってくれました。選手はお互いに尊敬し、恐れ合いながらも、時には自信を失う瞬間がある。絆を築き相手に惹かれる一方で、憎しみや勝ちたい気持ちも湧き上がってきます。そういう雰囲気が彼の出演で自然に出たと思います。マチューはリングのソレイマヌからパンチを受けないように気をつけていましたし、感情がふたりの眼差しに表れていたので、カメラはボクシングの迫力を容易に捉えることができました。
 
――俳優として作品に参加された感想を聞かせてください。
 
ソレイマヌ・ムバイエ:この作品に出演できて幸せでした。恐れていたのは、俳優として期待に応えることができるかということでした。マチューも、サミュエルも助けてくれました。演技になっていると見えたのなら、監督のおかげです。機会があれば、演技はぜひ続けていきたいと思います。
スパーリング・パートナー
 
――今後もカソヴィッツさんは俳優と演出を両輪で続けていかれますか。
 
カソヴィッツ:ふたつのオプションを持って、どちらかを選んでもいいという状況は自分にあっているので、ずっと続けていきたいと思います。
 
――次回作のご予定はありますか?
 
ジュイ監督:テーマをふたつ考えています。ひとつはオリジナルシナリオで、もうひとつは戦争映画。戦争を体験した人が既に高齢者になっているのでリサーチも苦労します。ここ1~2年は本人や家族に会ったりして、準備を進めて書き進めています。新作に向かってやらなくてはいけないことが満載で、実現までに時間がかかると思います。
 
(取材/構成 稲田隆紀 日本映画ペンクラブ)

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