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2017.11.10 [イベントレポート]
「ドイツ映画界における女性製作者の戦いはいい方向に進んでいます」10/30(月):Q&A『さようなら、ニック』

さようなら、ニック

©2017 TIFF
10/28のQ&Aに登壇したベッティーナ・ブロケンパーさんとフレドリック・ワーグナーさん

 
10/30(月)、コンペティション『さようなら、ニック』の上映後、プロデューサーのベッティーナ・ブロケンパーさんと、俳優のフレドリック・ワーグナーさんをお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 
ベッティーナ・ブロケンパーさん:マルガレーテ・フォン・トロッタ監督とは、『ハンナ・アーレント』でも、一緒に組みました。今回、こうしてTIFFに参加することができて大変嬉しく思います。初めて日本に来ましたが、映画祭の方々にいいケアをしていただいて嬉しく思います。
マルガレーテ・フォン・トロッタ監督の作品を上映することができて大変嬉しいですが、残念ながら彼女は新しい作品を作成中ということで、代わりに私が来ることができました。そこはちょっと複雑な心境ですね(笑)。
 
フレドリック・ワーグナーさん:皆様、本当にお越しいただきありがとうございます。
私も東京に来るのは初めてで大変嬉しく思っております。この映画が東京中の映画館で公開されるようになるのを願っています。そうなったらまた見に戻ってきたいですね。
本当に映画祭の皆様には素晴らしくケアしてをいただいて、まるで映画スターになったような気分です。ありがとうございます。
 
Q:今作はタイトルのポップさもあり、明るくモダンな作品になったわけですが、監督の中で心境の変化があったのでしょうか?
 
ベッティーナ・ブロケンパーさん:マルガレーテ監督の心の内までは探れないのですが、どういうプロセスでこの作品が出来たのかということを紹介したいと思います。『ハンナ・アーレント』というのは本当に長い時間をかけて、戦いのような形で作業を進めていた作品でした。哲学者を描いているわけですが、その時の脚本のパメラ・カッツともずっと一緒に仕事をしていてその3人で仕事をすること自体がすごく楽しかったのです。すごく大変な作品をやりあげたから、今度やるときは楽しいことをやりましょう、10年間すごく苦しんだのだから次はもっとライトなタッチのものをやっていきましょうよ、と話していました。マルガレーテ監督は素晴らしい監督でしかも勇敢な方なので「コメディはやったことないからやってもいいわね。」という話になったんです。私も“プロデューサーとしてコメディをやったことないからやってみよう。”となり、パメラさんも「やったことはないけど楽しそうね。」という話になって、この作品に至りました。コメディの作品になりましたが、マルガレーテ監督のタッチはこの作品にも含まれていて、作業も楽しく進めて、素晴らしい体験となりました。『ハンナ・アーレント』と比べればそんなに時間もかからずに作ることができました。
 
Q:主人公に振り回される役どころはいかがでしたか?
 
フレドリック・ワーグナーさん:昨日もこの話をレストランでしていたのですが、私は同じような体験を実際に女性の友達で経験したことがあります。彼女の方からアドバイスをくれというからアドバイスをしてあげました。けれども、翌日、別のアドバイスをしてくれないですかとまた来るんですよ。そしてしばらくするとまた新しい問題を相談されるんです。二週間くらいして、この人はもしかして何も聞いていないのではないかということに気付き始めまして(笑)、しばらく話を聞くのをやめました。その話を昨日ちょうどレストランでしていたときに思い出して、どうやらそれは女性としては、話を聴いてもらいたいだけで答えが欲しいわけではないんだという結論に至りました。そこでベッティーナさんが言っていたのですが、男性は割とこのような解決策を提示したがるけれど、女性はやっぱり聴いて欲しいだけで、別に何か答えを求めているわけではない、と。この作品の主人公の女性二人のジェイドとマリアも同じような感じなのではないかと思います。
ジェイドにとって、私の演じたウィットさんというのは、他に親友的な存在がいないので、同じ職場の友人として何か困ったときに頼りにする立場なのだと思います。
 
Q:「お金と成功だけの街よりも私は他のところで暮らす」という登場人物がいましたが、監督からのメッセージなのでしょうか?
 
ベッティーナ・ブロケンパーさん:マルガレータ監督の立場になって言うと彼女は、もともとすごく貧しい家庭に育って、戦争の難民としてシングルマザーとともに育ってきた人なので、彼女にとってお金というものは最も重要ではないんですね。どちらかというとその文化にアクセス出来たり、自分の表現が出来るということの方を重要視されるので、お金というのが監督自身の推進力になっている訳ではないのです。それは私も同じで、すごく一緒に仕事をしたいと思うような監督さんとストーリーを伝えられれば良いのです。でも実際は、理想を言いつつも資本主義の世界に生きているので何かをやろうと思えばお金は必要になってしまうということですごく難しい事です。
もう一つの作品『グレイン』という私がプロデュースしている作品が今回、このTIFFで上映されていて、それも自分たちは何かをしなければならないと問いかけをしている作品なんですが、やはり資本主義も来るところまで来てしまったので何か将来を考えたときに自分たちは何をすべきなのかということを考えなくてはならないポイントに来ているのではないかと思いますが、あくまでも私は政治家ではなくフィルムメーカーです。
 
Q:ドイツの映画界における女性製作者の現状は?
 
ベッティーナ・ブロケンパーさん:この作品の中では違う人生を選んだ二人というのが描かれているわけなのですが、ドイツや他の西洋諸国でもキャリアを選ぶのか家庭を選ぶのか選択をするようになって参りました。その選んだ後に相手と対立が生まれてしまう様な傾向がありました。ですので、自分の決めた選択を受け入れて欲しいという願いが込められていると思います。
私自身は18年ほど前からこの業界に身を置いています。始めた当時は女性の監督、プロデューサーはほとんど見ませんでした。この10年ぐらいで少しいい方向に変わってきておりますし、平等な立場になりつつあります。ですが、まだまだ戦いは続いていますね。悲劇的な統計がありまして、予算が300万ユーロ(約4億円)を超えてしまうようなプロジェクトの場合ですと、女性の監督が占める割合は4%しかないと言われています。ですので私たちは子供向けとか、あるいは何か実験的な作品しか現状ではできません。もっと大きな予算を獲得しようとするとヨーロッパでも資金を調達するのは難しくなってきます。それと戦う動きはもちろんありまして、私の同僚が果敢にも戦っていて、それはいい方向に進んでいると思います。今回、英語での製作をしたのも世界中の観客に届けたいと思ったからです。
 
Q:この映画は絶対成功すると思うので、ぜひパート2を観たいです。制作予定はありますか?
 
ベッティーナ・ブロケンパーさん:今の質問を持ち帰ってマルガレーテと相談します。もちろん脚本家のパメラさんとマルガレーテ監督とはもう一度組みたいので考えたいです。次は犯罪ものにしたいという構想もありますが、続編というアイデアは持ち帰りますので、もし実現したらクレジットに名前載せますね(笑)。
 
Q:マルガレーテ・フォン・トロッタ監督と組んでみて?
 
フレドリック・ワーグナーさん:私の撮影が終わって、自宅に戻った時に家族からマルガレーテさんと一緒にやってどうだったと聞かれました。彼女はスウェーデンでもいわゆるレジェンド的な存在です。すごく素晴らしい人で、チームや俳優たちに信頼を寄せてくれます。信頼されている、ということが伝わって、やる気もモチベーションもとても上がりました。
身近では私のおばあさんが、そのような人なので「まるで我が家のおばあさんのように温かい人だよ」と、家族には話しました。

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