10/30(月)、国際交流基金アジアセンター presents CROSSCUT ASIA #04 ネクスト! 東南アジア『ヤスミンさん』の上映後、エドモンド・ヨウ監督、女優のシャリファ・アマニさん、映画監督で出演もされた行定 勲さんをお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
エドモンド・ヨウ監督:(日本語で)こんばんは、エドモンド・ヨウです。『ヤスミンさん』の監督、マレーシアから来ました。今日はありがとう。楽しいです。
シャリファ・アマニさん:皆さま、本日はわざわざこの映画を観にお越しくださいまして、本当にありがとうございます。私自身はまた東京国際映画祭に戻ることができまして、大変うれしく思っています。
行定 勲監督:ありがとうございます。ありがとうございますって僕の作品じゃないんですけど(笑)ちょっと不思議な経験というかですね、自分がスクリーンの中にいるっていう経験は、なかなかないものですから。本来はメイキングのはずが、メイキングじゃないものになってちょっと不思議な作品になっています。でも映画というものはこうやって作られていくものなんです。偶発的に作られたものがこうやって皆さんの目に届くっていうのはすごく嬉しいなと思います。本日はありがとうございました。
Q:ヤスミン・アフマド監督の作品との比較、監督からの教え等がありましたら教えてください。
エドモンド・ヨウ監督:恐れ多くて自分の作品とヤスミンさんの作品を比べることはできません。マレーシア人にとって、彼女は本当に「シネマの巨人」といっても過言ではない重要な人物です。同時に、東京国際映画祭で彼女が受賞なさってから、本当にマレーシアの映画に脚光が浴びられるようになりました。そこから色々と作品も生まれましたし、この12年間でマレーシアの映画がこの東京国際映画祭で数多く上映されたことは本当に素晴らしい。そのきっかけを作ってくださったのは何といっても彼女だという風に僕は思っております。
僕も彼女もやはり自分のパーソナルな映画を作っていると思います。それは、あたかも自分が観察したもの、または自分の経験を芸術的に解釈して描いたもの、そういったものを描いています。愛を込めて描いているという風に思っております。もちろん、僕と彼女はバックグラウンドも違いましたから、描く内容も違ってくるわけですが、やはり「マレーシア」というものをひとつの題材として描いています。
やはり「ヤスミンの映画」=「マレーシア」といっても過言ではないという風に思います。私はまだまだそこまでには至っておりません。ただ、僕は僕なりにマレーシアで起きていること、マレーシアの今の瞬間、そういったものをできる限り映像でとらえようという風に努力しております。
シャリファ・アマニさん:ヤスミンさんという方は本当に自分の直感で映画を作られたという風に思います。それと同時に、自分の周りの人たちと状況を読む、そういった才能に大変長けていらっしゃった方です。その力は誰もが神に与えられるわけではないです。そういった意味では彼女は本当にそういうことをとても上手くしていらっしゃった。私は彼女の元で17歳からいろんな作品に出演させていただきました。そして、いかに彼女が空気と状況を読んで描くのかな、ということを一生懸命理解しようと思いましたが、なかなか出来なくて、正直に言うと未だにその謎は謎のままなんです。ただ、唯一彼女が私に教えてくださったことっていうのは、「とにかく自分に正直でいなさい」ということでした。そして「自分自身を信じなさい。自分自身の直感を信じなさい」ということでした。「それ以上のことは誰にもできないのよ」という風にいつもおっしゃってくださいました。ですから私はそれを守って「自分自身に正直にいよう」という風に思っております。
Q:ヤスミン・アハマドを敬愛している行定さんがエドモンド監督にインスピレーションを与えてこの映画が誕生したのですか?
行定 勲監督:ヤスミンさんは惜しくもこの世に居ないわけで、我々は直接的には繋がってはいなかったんですけど、映画を通して繋がりあっています。エドモンドも実際ヤスミンさんとは会ったことはないのですが、ヤスミンさんのことを生き証人のように知っているアマニが一緒に加わった時に、僕の気持ち的には恩返しではないのですが、ありがとうっていう気持ちになりました。
僕の中でのマレーシアとはヤスミン・アハマド監督の映画だったりするんですよね。
ヤスミン・アハマドの映画の中にある風景や空気や言語、人々っていうものが非常にマレーシアを表しているっていう風に思っています。そのマレーシアに乗り込んでいってそこでつながりのある人たちに出会いました。
僕がアマニたちと仕事をするなんていうのも奇跡的なことだし、永瀬正敏とアマニがツーショットで並んでいるっていうのも見たかった風景なんですよね。
自分が持ち込んだ空気を融合させるということ、もしかしたらエドモンドもそういうところを見ていて自分なりに解釈したのかもしれません。それはすごいパワーですよね。
ヤスミン・アハマドっていう人がどれだけパワーを持っていたのか、エナジーを持っていたのか、たぶん魂があったから、この作品が誕生したのだと思います。
Q:アジア三面鏡の『鳩 Pigeon』(2016)のメイキングの予定が『ヤスミンさん』という作品に変わったのはどんなタイミングでしたか?
行定 勲監督:エドモンドには、依頼していないんですよ(笑)。勝手に回していましたね(笑)。
エドモンド・ヨウ監督:プロデューサーとしての仕事の一環として、私がメイキングを撮るようになりました。
アマニさんがインスタグラムに投稿なさった、アマニさんとヤスミンさんがポーズをしている写真に自分が触発されて、何かしらの縁と運命を感じて制作を始めました。
自然発生のような形で制作を進めていきたいと思ったので、まず関係者にインタビューをすることから始めました。結果、行定監督もアマニさんも本当に自分の個人的な思い入れや思い出の両方を語ってくださいました。それにすごく感激して、それを活かした形で何かもっと広げていきたい、ただのメイキングではないものを作りたいという風に思っていったわけです。
2004年に遡るのですけど僕がまだパースで大学生活を送っていた頃です。留学生ということで寂しくて日本の映画ばかり観ていたんですね。オーストラリアとかアメリカの友達に日本の映画を観せまくっていまして(笑)、その中にはもちろん行定監督の『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)もありましたよ。その時にたまたま、東京国際映画祭でヤスミン監督の映画、『細い目』が受賞した(※第18回(2005) 最優秀アジア映画賞)と聞いたんです。それが僕としては自分の国の映画が受賞したんだと、すごく感銘を受けて、さらに日本の映画だけではなくマレーシアの映画にも興味を持つようになりました。それから12年後、色々な形でヤスミンさんとご縁があったこの3人が今この場に一緒に座って東京国際映画祭で皆さんとお話ししている。それも本当に自分としては何かのご縁だなと感じています。
司会:では、アマニさんに締めていただきましょう。
シャリファ・アマニさん:まず本当に今日来てくださった方々にお礼を申し上げたいと思います。そして本当に皆様方がヤスミンさんを愛してくださっていて私は大変嬉しく思っております。行定監督がヤスミン監督に触発されて作品を製作してくださったりしてくれたことに感謝いたします。そして行定監督がきっかけで二本の作品に私は出演できた、そしてマレーシアと日本を繋いでくださった。そしてヤスミンさんと私達、この作品を繋いでくださった。そういったことすべてにお礼を申し上げたいと思います。
そしてエドモンド、あなたは私の個人的な思い出を使って、この映画を作ったのね。でもあなたもヤスミンの作品にすごく刺激されて、その影響を作品に反映したこと、この『ヤスミンさん』という作品を完成させたことにお礼を申し上げたいと思っております。
東京国際映画祭、映画祭に関わる皆さんには本当にどうぞ、ずっとヤスミンのことは忘れないでください。そして、そんなお願いが出来ることにも大変嬉しく思っておりますし、それは私だけではなくマレーシアにとってもとても大きな意味のあることです。ですので、どうぞこれからもヤスミンを忘れないでいてください。お願いいたします。