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2017.11.03 [イベントレポート]
原 恵一監督、加瀬 亮と歩んだ『はじまりのみち』での“田中裕子伝説”を披露!
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   原 恵一監督による初の実写映画『はじまりのみち』が11月2日、第30回東京国際映画祭内の特集企画「映画監督 原 恵一の世界」で上映された。原監督は、主演を務めた加瀬 亮、アニメ特撮研究家の氷川竜介氏とともにTOHOシネマズ六本木ヒルズでのトークショーに出席した。この日は特集企画の最終上映となったため、原監督は“舌好調”。終了時間を大幅にオーバーしながらも「これも話したい!」としゃべりが止まらず、集まったファンを大いに喜ばせていた。

 本作は「二十四の瞳」「喜びも悲しみも幾年月」「楢山節考」など数々の名作を残した日本を代表する映画監督・木下惠介の生誕100周年記念作品。若き日の木下監督が、脳溢血で倒れた母を疎開させるために2台のリヤカーに母と身の回りの品を積んで山越えをしたという実話を軸にした物語が描かれる。元々「映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」が大好きだった加瀬が「(原監督が)実写映画を撮ったらいいなと思っていたんです」と明かすと、原監督は「常に予算を考えないといけなかった」と壁にぶち当たったものの、生身の人間が演じる実写作品ならではの面白みに気づいたようだ。

 「実写はアドリブが素敵だと思いました。アニメでもストーリーボードに書かれていない演技を追加することがありますが、役者さんのアドリブが本当に面白くて」と胸中を吐露すると、海外で大ウケだった便利屋役の濱田岳のユニークなセリフ、そして松岡茉優&相楽樹を加えた宿屋のシーンを例に出した。「宿屋の芝居はアニメーションでやると、監督が全部細かい芝居を考えないといけない。3人に芝居をお願いすると、いつまでもやっていましたね。それが面白くて、カットをかけるのがもったいなかった(笑)」と振り返ると、「松岡茉優と相楽樹は、当時高校生。2人が今活躍しているのはすごい嬉しいですね」と語っていた。

 座長として作品をけん引した加瀬を突如「ドMなんですよ」と評し、笑いを誘った原監督。「7月の設定なんですが、撮影は11月。雨を降らす場面では、本当に寒くて、加瀬さんは震えていた。絶対に怒るんじゃないかと思っていたが、加瀬さんは『監督、寄り(のカット)は撮らなくていいんですか?』と。ドMだな、この人と(笑)」と暴露すると、加瀬は「違うんです」と笑いながら否定して、役づくりのこだわりを明かした。「この物語は、反発して挫折した木下青年がリアカーを引いていく話。抱える信念、尊厳を今一度自身に問わなければいけなかった。その時に山越えがきつくないと嫌だったんですよ。そのきつさを感じないと、引く意味がない」と熱弁していたが、疑念の晴れなかった原監督は「いやいや、絶対ドMですよ」と茶々を入れていた。

 原監督が驚きを禁じ得なかったのは、木下監督の母・たまを演じた田中裕子の女優魂だ。「(田中の起用は)加瀬さんが提案してくれた」と告白すると「(たまは)病気だから、僕は浴衣を羽織っている程度を想像していた。でも、田中さんは『ちゃんとした着物を着たい』『髪もきちんと整えたい』と。確かにいつも家の布団で寝ているたまにとって、(山越えは)息子との久しぶりの旅行なんです。田中さんが全て正しかった」と納得の表情を浮かべていた。

 さらに、夜空を見上げるたまをアップで映すシーンでは「月が見たいから、目の前にある(録音用の)マイクをどかしてほしいと仰った。感動しました」と述懐し、雨の山越えの場面では「田中さんの顔に泥がつくんですが『顔についた泥を舐めてもいいですか?』と。たまは片手しか使えないんですが、その手には傘が握られている。俺なりの解釈として、立派な身なりを保つために、舌をつかったんじゃないかと思う」と次々と知られざる“田中裕子伝説”を披露した原監督。「田中裕子、恐るべし」という言葉に同調していた加瀬は、マイクを手放したフォトセッション時に「田中さん、すごいですよね……。あんなに(芝居が)やりやすい人はいませんよ。納得すれば、なんでもやっていただけますから」と原監督にコッソリと伝えていた。

 第30回東京国際映画祭は、11月3日に閉幕。
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