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2017.10.31 [イベントレポート]
「自分の感情に居心地の悪さを覚えるということをさせたかった」10/28(土):Q&A『ペット安楽死請負人』

ペット安楽死請負人

©2017 TIFF
(左から)テーム・ニッキ監督、俳優のマッティ・オンニスマーさん、プロデューサーのヤニ・ポソさん

 
10/28(土)、コンペティション『ペット安楽死請負人』の上映後、テーム・ニッキ監督、俳優のマッティ・オンニスマーさん、プロデューサーのヤニ・ポソさんをお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 
テーム・ニッキ監督:私たちは今回の映画祭で、だいたい一週間くらい日本に滞在しております。その間私たちは非常に楽しくて、皆様から丁寧で暖かいおもてなしをしていただいております。
私たちとしては絶対しなくてはいけないのですが、また良い映画を作り、またここに戻ってきたいと思います。
 
マッティ・オンニスマーさん:どうもありがとう。今、私は日本にいることにとっても満足していますし、うれしいし幸せに感じています。実は子供のころから日本、東京に来たいと思っていたんです。今回この映画で主役という大役を演じさせていただいて、それをもって日本に来れたことを非常にうれしく思います。どうか皆様がこの映画を楽しんでいただけることを望んでおります。
 
ヤニ・ポソさん:実は私、今日来たばかりなんです。残念ながら素晴らしいと聞いたオープニングセレモニーに参加できなくて、悲しい思いをしたんです。YouTubeを見て何でここに俺がいないんだと泣いてしまったくらいです。
東京は本当に素晴らしい都市だと思います。この映画祭も私が経験した中で最高なものだと言っていいと思います。素晴らしいオーガナイズ、素晴らしい観客の皆さん。皆さんが願わくばこの映画を好きになってくださる、もし、もうすでに好きになっていただけたのであれば、こうした映画を見ていろんな考えを思い巡らせていただければと思います。
 
Q:主人公のキャラクターから物語を作ったのか、物語があって後から主役のマッティさんを抜擢したのでしょうか?
 
テーム・ニッキ監督:どちらが先というのはなく、同時でした。今回の脚本はマッティのために書いたものです。脚本とマッティ(俳優)が手に手を取って同時進行だったと思います。
洋服に関してですが、様々な衣装を脚本が出来上がる前に試しました。例えば帽子だったり、パイプ、ジャケット。そういったものをいろいろ試しながら決めていきました。
ただ、洋服に関してはなるべく男らしく見えるようなルックスになるように決めていきました。とにかく今回はマッティのために書かれた脚本です。
 
Q:ラストシーンについて?
 
テーム・ニッキ監督:それに関しましては、実は登壇前に楽屋で話をしたんです。そこで、我々はどのように思っているかということは皆さんには話さないと、そういう風に決めました。観客の皆さん一人ひとりが決めることができると。
 
Q:音楽を選ぶときには何千曲も聴いて決められたのでしょうか?
 
テーム・ニッキ監督:何百曲も聴きました。実は今回使った曲というのは私たちが最初に選んだ曲ではないのです。権利が取れなかったので。でも、それが取れなくてよかったと思います。この曲のほうがよかったと思います。
すごく古いフィンランドのクラシックみたいな感じの曲が欲しいと思ってこの曲にしたのですが、実はこの曲は元々アメリカの曲なんです。『I Love You For Sentimental Reasons』というタイトルです。感傷的な理由で君を愛してるよといったタイトルで、アーティストが誰かもわからない(※オリジナルはナット・キング・コール)のですが、これのフィンランド語バージョンがすでに1950年代にできていたというくらい古い曲なんです。歌っているのはとても有名なフィンランド人の歌手なのですが、実は私と同郷なんです。これは私だけのお楽しみなんですけれども。
この曲を選ぶにあたっておもしろい話があるのです。アメリカの元々のタイトルは『I Love You For Sentimental Reasons』というちょっとつまらないタイトルなんですけれども、フィンランド語のバージョンでは「君のことが大好きで苦しくなる」というようなタイトルで、その歌詞は死について歌っているんです。フィンランドではこの曲は実はお葬式と結婚式両方で使われるという、まさにこの映画にぴったりの曲なんです。それなので、一番最初に選んだ曲の権利が取れなくてよかったと思います。
 
Q:主人公に感情移入してしまって、複雑な感情になりました。監督はどう思いますでしょうか?
 
テーム・ニッキ監督:感じてらっしゃることは正しいです。というか、どなたかがどう感じてもどれも正しいと思うんです。私の意図としては、観ている方に自分がこう感じてしまって居心地が悪い、自分の感情に居心地の悪さを覚えるということをさせたかったんです。どの人が悪い奴なのかちょっとわからないっていうのが居心地の悪さなんですね。
そういう反応なさって正しいと思いますし、皆さんがどういう感情を持っていただいても正しいと思います。ただ、さっきも言いましたけども、私の意図としては観た方に居心地の悪さを感じてほしかったわけです。
 
Q:フィンランドの方はカルマ、輪廻転生を信じていらっしゃるんでしょうか?
 
テーム・ニッキ監督:フィンランドでは仏教的な意味のカルマというのは信じていないと思います。むしろ、ハンムラビ法典の「目には目を。歯には歯を」というような感じのほうが近いかもしれません。
また、仏教的な、何かを殺したら、自殺をしたら動物になって戻ってくるとか、何千回もこの世に戻ってくるっていうことはないんですけれども、それは良さそうですよね(笑)。
 
Q:主人公の彼が住んでいるところはロケハンした結果あの場所にたどり着いたのか、教えてほしいです。
 
テーム・ニッキ監督:あれはロケハンで見つけました。これは全部リアルな場所で、ロケハンで見つけて、何も作り上げていないんです。ですので、あの場所を見つけてから、脚本の中に電車を取り入れました。
あともう一つなんですが、すべてのロケーションは、私が10年以上前から探していたところなんです。この脚本を書いた時にはすべてどの場所にするかは頭に入っていました。
 
Q:タイトルが「Euthanizer」、安楽死させる人という意味なんですが、なぜ安楽死を題材に?
 
テーム・ニッキ監督:この映画のテーマで描きたかったのは苦しみと痛みということなんです。人間が苦しみの中で生きていて、そして安楽死というのはよくある話で、もう何回も語られてきたと思うんです。なので、それが動物であればもっとおもしろいと思ったんです。つまり、人間が死ぬことにはあまりショックを感じないけれども、それが動物であると違うやり方で心を人間は揺さぶられるんだと思うんです。
よく「ランボーが犬を殺したら、観客はどう思うだろう?」って聞くんです。ランボーって何百人も殺していて何も感じていないですよね。でも彼が犬を殺したらっていうと、ちょっとタブーな感じがします。つまり、ヒーローが犬を殺したりするのはタブーですよね。だから動物にしました。
 
司会:監督から最後の一言をいただけますでしょうか。
 
テーム・ニッキ監督:こんなにたくさんの人がQ&Aに残ってくださるのを見るのって本当に素晴らしいと思います。映画祭のQ&Aで5人ぐらいしかいないっていうことがよくあるので、すごく嬉しく思っております。そして皆さん映画を楽しんでいただけたら本当に嬉しいと思います。90分、いい時間を過ごしていただけたらと願っています。

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