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2017.10.31 [イベントレポート]
「黒川さんを古典的に撮ることで、より美しさが引き出されると思いました」10/27(金):Q&A『二十六夜待ち』

10/27『二十六夜待ち』Q&A

©2017 TIFF

 
10/27(金)、日本映画スプラッシュ『二十六夜待ち』の上映後、越川道夫監督、井浦 新さん(俳優)、黒川芽以さん(女優)をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細(次回上映11/2・20:10~)
 
越川道夫監督:皆さん、こんばんは。今日は初めて一般の方に完成した作品を見ていただきました。ご覧いただき、ありがとうございます。
 
黒川芽以さん:私も皆さんと一緒に観るか悩んでいましたが、ドキドキしてしまうので、今日は最後の方だけ観ました。
 
井浦 新さん:僕は最後のラブシーンのところから観たのですが、凄いところで入って来ちゃったなと(笑)
 
Q:このお話は、主役の二人を本当に応援したくなるストーリーだったのですが、これらの役を黒川さんと井浦さんにやってほしいと思った理由は何ですか?
 
越川道夫監督:僕は監督をやっていてもプロデューサーをやっていても同じようなところがあるのですけど、いままで一緒にやってきた人達で考えます。黒川さんに関しては、脚本を僕の奥さんにも読んでもらって、「あの『ドライブイン蒲生』のお姉ちゃんが良いよ!」と言われて決まりました。
 
黒川芽以さん:奥様ありがとうございます!
 
越川道夫監督:それで「あ、そうだよね」って、直ぐに客観的に見ることができました。当て書きとかはしないのですが、脚本を書き終わって、やはり杉谷は(井浦)新さんしか思い浮かばなかったですね。すぐに新さんにお願いしました。
 
Q:この作品は10日間で撮ったということですが、気持ちの準備だとか、役作りするうえでの心構えとか、どのようにして臨まれましたか?
 
井浦 新さん:越川監督の現場では、僕も「越川さんとまた遊べる」っていう感覚で行ったので、準備していくこととかはあんまりないんですよ。そういうことは、常に現場でどんどん生まれていくので、黒川さんとご一緒して感じたことを一番大事にしていました。技術的なところでは、包丁で魚をおろせるようにするために、その時期は、おろした魚で毎日お刺身にしたり揚げたりして、とにかく包丁を使ったりしているだけでしたが、それも含めて現場でどんどん杉谷が生まれてきました。
 
Q:包丁捌きは本当に見事でした。それこそ10日間ではできないですよね?撮影期間よりもすごく時間をかけて杉谷の下地を作られたということですね。
 
井浦 新さん:包丁捌きは、小料理屋の大将にお願いして、師匠がちゃんと教えてくれました。特に、フグはしめていくところまで指導してくださったので、「夏に免許とるか⁉」とも言われました(笑)
 
Q:黒川さんは役作りとか準備はどうされていたのですか?
 
黒川芽以さん:言葉では表立って言ってはいないのですが、震災の影のある役だったので、東日本大震災時、自分は東京にいたので完全には体験出来てはいないんですけど、映像などを観たり、お話を聞いたりしてイメージングしました。それをずっとしていたと言うよりは、そこにしまっておきたかったんですよね。その状態で杉谷さんとの演技をしたかったからです。最初にやったのはそれで、あとはラブシーンなどは監督と相談して、細かく「どうすればいいですか?」と聞きました。
 
Q:黒川さんとは彼女が何歳の頃からお知り合いなのですか?
 
越川道夫監督:最初に会ったのはたぶん彼女が16歳の頃だと思います。
 
Q:その時から考えると、ラブシーンを演出するというのは監督としてはいかがでしたか。
 
越川道夫監督:いや、そんなことを言ったら…。撮影監督の山崎裕さんは、新くんのデビュー作の『ワンダフルライフ』を撮っていて、それから20年経って、新くんのラブシーンを山崎さんが撮っているんですよ。お互いに「僕のお尻を撮った!」「大人になった⁉」って現場で言い合っていましたよ(笑)
 
Q:長いご縁、いい関係が続いているって本当に素敵ですね。
 
越川道夫監督:そうですね。今回レッドカーペットを黒川さんと新くんと一緒に歩くっていうのも感慨深いんですよね。
 
『二十六夜待ち』レッドカーペット

©2017 TIFF
オープニングイベント・レッドカーペットに登壇した越川道夫監督、黒川芽以さん、井浦 新さん

 
Q:黒川さんは方言を学ぶにあたって苦労したことはありますか?
 
黒川芽以さん:いままでもいろんな方言をやってきましたが、浜通り弁はとっても難しくて。いつも思うのが、感情が入ったとき、どのくらい音が変わっていいのかというのが難しかったです。でもそういったところも方言指導の方が全部受け止めて、指導してくださったので、逆にその方言が役に色を付ける手助けになったので、私にとっては愛すべき方言となりました。
 
Q:監督は黒川芽以さんの魅力をどのように引き出そうとしたのでしょうか?
 
越川道夫監督:映っている役者さんが魅力的になるように、それは当たり前か(笑)僕の師匠たちはアイドル映画を撮っていて、自分の表現じゃなく、この子のために作品を作ろうという想いが強かったようです。僕はその後ろ姿をみて育ってきたので、こうするべきという答えがある訳ではなく、それを自然に受け継いでいると思っています。ただ、黒川さんは古典的に撮ってあげた方が絶対に良いと思ったんですよね。黒川さんの姿が画面上にポンッと出てきて、この子が主役なんですよって正面から寄っていくという、古典的な撮り方の中でと思っていました。じゃあ、どの場面がそういう風にって、いままでいろんなことを考えてはきているんですけど、一口では言いづらいですね。
 
黒川芽以さん:打合せの時から、綺麗に撮ってあげたいということを監督は言ってくださっていました。新さんと話しがしたいですってお伝えしたときも、新さんもそうおっしゃってくれていました。言葉にしないけど、撮影中にそう思ってくださっているというのは感じていて、安心感がすごいありました。例えば、ラブシーンについても、前もって綺麗に撮れるさまざまな角度とか考えたりしていても、現場ではそれが全部飛んじゃったりしたんですけど、みんなで作っていけば大丈夫だっていう安心感がありました。
 
井浦 新さん:安心感というか、一緒に作っているという感覚が強いですね。何日か経ったときに「余計なことを考えずに遊ぼう!」と越川さんと話し合っていました。
 
Q:役作りで大変だったところはどこですか。また、観てない方々に向けて作品の良さとか、拡散してほしいところがありましたら教えてください。
 
黒川芽以さん:この映画を観た方々に「頑張ったね」とよく言われるんですけど、私自身は頑張ったというよりは、楽しんで良い作品を作りたいという想いがありましたので、この作品に参加できたことをすごく嬉しく思います。20代最後に何か自分の中で作りたいと思っていた時、ちょうど本作の撮影中が20代最後だったので、信頼できる監督さん、キャストさんがいらっしゃって、役者としてなるべくリアルに感情をぶつけあうだけだと思って挑みました。
 
井浦 新さん:いま観てくださった皆さんが、心の中でよくわからなかったとしても、いまそれをうまく表現できる言葉が見つからないのですが、この作品は、何か特別なことが起きる映画ではなく、そこがつまらなかったとしても、何らかが重ね合わせるところがある想いがあると思います。
 
Q:脚本はどうような感じだったですか?
 
越川道夫監督:撮影において脚本から出発はしますが、役者が台本を見ないで演技するのと一緒で、僕もカメラの横で脚本は見ません。出来上がったカットは、ト書きが二行のものが四行になっていたりすることもたまにしますが…反省します(笑)。反省はしますが、それがいいかどうかわからないですし、僕はそのやり方でしか役者の芝居と向き合えないだろうと思っています。完成されたものは事前にいろいろ書き込んだ脚本とはまた違うものになっているので、あっても意味がないんです。だから、自分が書いたことを消しながら作業していくんです。今日、自分たちがやったことを思い返した後に、次の日どう撮っていくか決めていくんです。なので、クランクアップした時には僕の台本は一切何も書かれていません。
 
Q:お互いお仕事をされてみて、いかがでしたか?
 
黒川芽以さん:撮影中は10日間集中していたので、撮り終わった後は家に帰って月見てボーっとしちゃうくらいおかしくなってましたね。あと、ある日、(新さんが)白いジャージを着て現れたときには、ただの白いジャージ着ているのにこんなかっこいいおじさんいるんだと思いました。井浦さん、普段はおしゃれですよ。
 
井浦 新さん:ただの白いジャージって(笑)最初の顔合わせの時に、正面から笑顔をしっかり撮るって断言していたので、短い時間で黒川さんをどう撮っていくかですよね。現場に入る前は、彼女自身も不安を抱えているのは僕も感じていました。でも、彼女がだんだん由実さんになっていく姿が見えてきて、ものすごい逞しくなっていって、すごく安心して一緒に作っていけました。二人とも“間”があればあるほど会話が生まれていきましたし、セリフとしての会話と二人の間の“間”が必要で、初日や二日目ではお互いにその呼吸を計りながら作っていったんですけど、だんだんとその呼吸が頭で考える必要がなくなっていっていきました。

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