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2017.10.29 [イベントレポート]
原田眞人監督が重要視するクラシック映画の“定点観測” 「第14回文化庁映画週間シンポジウム」
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   第30回東京国際映画祭の連動企画「第14回文化庁映画週間シンポジウム」が10月29日、東京・飯田橋の神楽座で行われ、原田眞人監督、撮影監督の宮島正弘氏、東京国立近代美術館フィルムセンター参事・岡島尚志氏、モデレーターとしてKADOKAWAの代表取締役専務・井上伸一郎氏が出席した。

 「時をかける僕らのクラシックス」と銘打たれたイベントは、4Kデジタル復元、1980年代以降に進んだデジタルリマスター化といった最新の復元技術を通じて、クラシック映画の新たな魅力に迫るもの。この日はアニメーション監督の大藤信郎が製作した「幽霊船」の復元過程をとらえた映像もお披露目され、岡島氏は「デジタル修復で一番気をつけなければならないのは、倫理の問題。なんでも出来てしまうので、消してはいけないものまで消すのはよくない。例えば撮影で失敗があったものを現像所で直す。しかし、一度公開されたものを、後の世代の者が直していいのかというのは難しい問題です」と解説していた。

 宮川一夫撮影監督の助手を長年にわたって務めた経験を活かし、数々のクラシック映画のデジタル復元を監修してきた宮島氏はある警鐘を鳴らす。「(修復作業は)やろうと思えば、どんなに大変なことかということ。つまり知識がないとできない。フィルムや光、科学と電子を知っていかないと、将来全く別の作品が出来上がってしまう危険性がある。次第に経験者も少なくなり、フィルムのことをさっぱりわからずに、色を直してしまうんじゃないかと思っている」と語った。そして「(修復に関して)今後は新しい学問として取り組まなければならない」と指摘していた。

 「映画を作る時は、自分の好きな監督や作品を受け継いで、次世代に渡したいと考えている」という原田監督は、岡田准一主演作「関ヶ原」にもクラシック映画のエッセンスを注ぎ込んでいた。「『関ヶ原』の製作時は『七人の侍』に匹敵する合戦シーンをどう描くかを徹底して研究しました。『七人の侍』の時代背景は、推測すると1585年。衣装や風俗的な要素を参考にしています。また溝口健二監督の『雨月物語』からは、エキストラとして出演している方の衣装に着目していました」と告白していた。

 さらに昭和の文豪・井上靖の自伝的小説を映画化した「わが母の記」を話題に挙げると「この作品をきっかけに小津安二郎を再発見した」という。「それまでは小津作品は好きじゃなくて、50歳を過ぎたら違う印象かなと(笑)。『浮草』が一番好きなんですよ。最後のカラー6作品はマンネリ化したと言われているけど、ずっと“進化”しているんです」と分析し、『わが母の記』のオープニングでは「浮草」にオマージュを捧げた。そして井上の小説を再び題材にし、役所広司主演でドラマ化した「初秋」は「『わが母の記』で語りきれなかった小津映画への思いを込めています。(未ソフト化のため)役所さんをそのまま起用して映画としてリメイクしようかな」と構想を打ち明けていた。

 クラシック映画を「宝庫」と言い表した原田監督は「古典作品を鑑賞して『今見てもこれだけインパクトがある』という思いを抱けると、自分の映画を100年先の人にも見てもらいたいという気持ちにつながっていく」と述べると、コンスタントに過去の名作に触れる重要性を説いた。「“定点観測”が必要だと思う。ひとつの作品の印象が、年代によってどんどん変わっていく。自分の成長のプロセスがはかれるはず」と熱弁していた。
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