大林宣彦監督の最新作「花筐 HANAGATAMI」が10月28日、第30回東京国際映画祭Japan Now部門で上映され、大林監督をはじめ主演の窪塚俊介、長塚圭史、常盤貴子らが東京・TOHOシネマズ六本木で舞台挨拶を行った。
1977年の初商業映画「HOUSE ハウス」以前に完成していた幻の脚本を、40年の年月を経て映画化。三島由紀夫が小説家を志すきっかけになったという檀一雄の純文学「花筐」をもとに、太平洋戦争勃発前夜を生きる若者たちの青春群像劇を圧倒的な映像力で描く。舞台となった佐賀県唐津市の「唐津くんち」が映画史上初めて全面協力。肺がんで闘病中の大林監督は、余命宣告を受けながら、「この空の花 長岡花火物語」「野のなななのか」に続く“大林的戦争3部作”の締めくくりとなる集大成を完成させた。
報道陣の入場中からトークを始めていた大林監督は、「私は一生アマチュアとして、弱者の立場からの自分の個人史のような映画をつくろうとやってきました」と「映像作家」としての矜持を掲げ、「40年前はこういう映画を撮っても誰も感じてくれませんでした」と説明。「自分が信じる映画くらいは自由につくらせてほしいという思いでやってきました。ところが、そういう映画がまた作れなくなるんじゃないかという事におびえています。いまこそ自由というものの尊さを表現したいという事でこしらえたのがこの映画でございます」と語った。
前作「野のなななのか」でも主演を務め、大林監督のマドンナ的な存在といえる常盤は、「完成した作品を見て、なんてやんちゃな監督なんだって思いました」と、大林ワールドに脱帽。「映画を知り尽くしている監督だからこそできたと思うのですが、本当にやんちゃで自由で好き放題。映画の可能性というものを広げていただけた気がして感激しました」。35歳にして16歳の主人公に起用された窪塚が、「キャスティングからしてなんて自由なんだ」と続けると、同級生役を演じた長塚も「ぼくは40歳を過ぎてますから」と応じ、会場の笑いを誘った。
大林組初参加の矢作穂香は、「初めて見た時は何が何だかわからなかったのですが、もう1回見たら違った魅力がどんどん出てきました。何度見てもいろんな楽しみ方ができる映画だと思うので、たくさんの人にたくさん見てもらいたい」。山崎紘菜も「若者の青春というのは、こんなにまぶしくて、うつくしくて、はかないものだなと学ばせていただきました。いま青春を謳歌している若い人たちこそ、この映画を見て、次の世代にどんどん伝えていってほしいなと思いました」と語る。若手女優たちの熱意に、大林監督は「戦争を知らない、若い人たちのためにつくった映画。一生懸命考えて見てくれた事が一番いいお客さんなのね。皆さんが実感を持って見てくだされば私としてはうれしい」と答えた。
舞台挨拶には、出演者の村田雄浩、岡本太陽も登壇。大林監督は「ベテランの少年たちですから、痛みや悲しみを表現できた。いい演技をしてくれました」と称えるとともに、会場にいた唐津の関係者にも敬意を示すなど、イベントは終始温かな空気に包まれた。
「花筐 HANAGATAMI」は12月16日から全国で順次公開。第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。