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2017.11.21 [インタビュー]
「映画というものは、それぞれ少しずつ欠点を持っていて、人間と同じく完璧ではないです」審査委員長 トミー・リー・ジョーンズ 公式インタビュー

トミー・リー・ジョーンズ審査委員長

©2017 TIFF

東京国際映画祭公式インタビュー 2017年11月3日
審査委員長 トミー・リー・ジョーンズ
 
第30回東京国際映画祭コンペティション部門は、88の国と地域より1538作品という過去最多のエントリーがあり、15作品が選りすぐられた。審査員の厳正な討議のもと、東京グランプリはトルコの匠セミフ・カプランオールの近未来SF『グレイン』が受賞。また、審査員特別賞は少女と父の葛藤を描いた『ナポリ、輝きの陰で』に輝くなど、バラエティに富んだ選出となった。審査委員長、トミー・リー・ジョーンズに選考のプロセスを伺った。
 
 
――まず、東京国際映画祭の感想から聞かせてください。
 
トミー・リー・ジョーンズ審査委員長(以下、審査委員長):今回の東京国際映画祭で審査員の方々と友情を築くことができました。一方で、意思の疎通を図るときには、それぞれ5つの言語を駆使しているため、通訳が必要となり、まるで国連のような状態でした。もちろん15本の作品を審査するのはとても大変なことです。
最良の映画祭は、理論整然とした物語、視覚的な美しさ、観客の時間を有意義なものにする映画が並んでいます。私たちは謙虚な心と希望を持って、観客に仕える立場にあったことを、審査員を代表して言いたいと思います。
 
――グランプリ作は全員一致だと伺いましたが、選考会の話し合いを教えていただけますか。
 
審査委員長:毎作品上映後に、時間を設けて意見の交換を行いました。お互いの意見を交換している間に、新たな発想、意見が出てきました。私たちは映画で生計をたてていますが、想いや感動は他の観る方々と変わりません。
 
――選考対象となった15本についてはどう思われますか。
 
審査委員長:今回、1500本以上の作品が提出され、我々は15本だけ拝見しました。それぞれ作品として異なる個性のものでした。
 
――15本に共通するものを何か感じられましたか。
 
審査委員長:私たちは作品をそれぞれの個性やユニークさに着目していたので、共通する部分など考えてもいませんでした。
 
――15本を観ると、グランプリ作品はテーマの大きさが、評価の対象となったのですか。
 
審査委員長:そういった区別では判断してはいません。たとえば、マレーシアの人々が直面した問題は決して小さなテーマではありません。また、テーマのみで映画を判断することはありませんでした。グランプリ作品は映像の圧倒感、神話性と物語を絡めたストーリーテリングが秀でていました。
 
――今回、アメリカ映画がコンペティションに入っていませんでしたが、そのことで客観的に選ぶことができましたか。
 
審査委員長:アメリカ映画がないから、客観的に作品を観ることができたかという質問ですか。私は映画製作者、監督、役者という職業なので、常に客観性を持ちながら作品を判断し、一方で主観的でもあります。ただ客観性に関しては、そうした外的な要素に依存することはありません。
 
――コンペティション作品の質や完成度に関して、どのように感じましたか。
 
審査委員長:欠点は、それぞれの作品が持っているものです。映画というものは、私たち人間と同じように完璧ではないと思います。具体的な審議の内容に関しましては、審査員に敬意を払い控えさせていただければと思います。
 
――具体的に『グレイン』のどの場面に引き込まれましたか?
 
審査委員長:燃えている木や、湖畔に赤ちゃんが捨てられているシーンなど、古代的な神話のエピソードが現実味を帯びて登場するところですね。古代の物語が、現代と密接なかたちで表現ができている点が魅力的でした。
 
――30回目という映画祭としては節目を迎えましたが、参加されて気づいたこと、アドバイスなどありますか?
 
審査委員長:1500本以上が実際に集まったことに感心しましたし、世界中の作品が持ち込まれたことが非常に素晴らしいと思います。私としましては、東京国際映画祭の今後も成功を願っています。アドバイスはありませんが、上映に関して監督の意図が忠実に反映されているのか、ちょっと疑問に思うところがありました。
特に色彩、明るさの部分です。作り手が考える映画を上映技師が正しく把握しているか…。このことは東京だけではなく、すべての映画祭が、上映には敏感になってほしいと思います。私の経験でいえば、上映のあり方、技術に関して満足したのは、残念ながらカンヌ映画祭だけでした。次は私の監督作品を東京に持って来たいとは思います。その時は、監督として上映に関して細かく注文を付けるでしょうね (笑)。
 
(取材/構成 稲田隆紀 日本映画ペンクラブ)

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