第30回東京国際映画祭が11月3日、最高賞の東京グランプリをトルコのセミフ・カプランオール監督作『グレイン』に授与し、10日間の会期を終了。コンペティション部門の審査委員長を務めた米俳優で監督のトミー・リー・ジョーンズをはじめ、審査員のマルタン・プロボ(フランス/監督・プロデューサー)、レザ・ミル=キャリミ(イラン/監督・脚本家)、ビッキー・チャオ(中国/女優・監督)、永瀬正敏(俳優)が、東京・六本木のEXシアターで会見した。
コンペティション部門全15作品の審査を終えたジョーンズ委員長は、「映画撮影が終わった後の打ち上げみたいだ(笑)」と達成感をにじませながら、審査員たちとの出会いと友情に感謝。プロボ監督は「それぞれの作品が世界の現状や、ときには不安が描き出されていた。映画監督が問題提起し、その映画を見た人々が意識を高め、世の中が愛と光にあふれる方向に進んでいけばうれしい」と感想を語った。
永瀬は、「1作品見終わるごとにミーティングをした。他の映画祭審査員経験者に聞いたところ、これは珍しいことだそう」とジョーンズ審査委員長の異例の提案を明かし、「共通認識をもち、それぞれの作品に意見を言うことができた」と感謝。続けて「この出会いを永遠に大事にしたい。ほかの皆さんは映画監督ですので、今後僕を俳優として使っていただけるようにがんばります(笑)」としっかり売り込んだ。
ジョーンズ審査委員長はこれを受け「私も俳優の仕事が欲しい」と報道陣の笑いを誘いつつも、「上映直後の感想が新鮮なうちに意見交換することが大切だと思った」とミーティングの提案理由を説明。「考えは、それを表現しているうちに成長していくもの。他の人の意見を聞くことで、変わったり発展したりする。有機的なプロセスだったと思う」と振り返った。
チャオは拍手を送りながら「素晴らしいリーダー。独自の意見もあるけど、常にみんなの意見も尊重してくれた」とジョーンズ審査委員長のリーダーシップを称えるとともに、「いままで言えなかったのですが、実は大ファンなんです」と突然の告白。ミル=キャリミは、「とても穏やかだった」とミーティングの様子を説明し、「(トミーは)まるでお父さんのよう。とても仲良くなれました。私の国(イラン)とアメリカの関係とは真逆です」と笑顔を見せた。
ファジル国際映画祭のディレクターを務めるミル=キャリミは、「それぞれの意見を一つにまとめるのは難しいが、みんなで努力した」と審査の苦労を述懐。「グレイン」以外に猛プッシュしたかった作品があるかという質問に対しては、永瀬が「それは5人だけの秘密。賞が多くあれば、15作全部が何かの賞を受賞したでしょう」と語り、プロボも「一丸となって出した結果」と強調した。