『リオデジャネイロ2016オリンピック公式フィルム:休戦の日々』が11月3日、第30回東京国際映画祭で世界初上映され、コンテンツディレクターのヒギア・イケダ氏、ディレクター・オリンピック財団カルチャーアンドヘリテージのフランシス・ガベ氏をはじめ、同オリンピックに出場した田知本遥選手、飯塚翔太選手、山縣亮太選手、ポポレ・ミセンガ選手がTOHOシネマズ六本木ヒルズでのトークショーに出席した。
『フランシスコの2人の息子』のブレノ・シルべイラ監督がメガホンをとった同作は、リオ・オリンピックを支えた市井の人々の姿を通じて大会を映し出す記録映画。ガベ氏が「テレビやSNSの情報を通じて、オリンピックのイメージは世の中にあふれています。だからこそ、大会を題材にした作品をつくることは難しい。今作は、まさにアイデア勝負だったんです。監督は『カリオカ(リオデジャネイロ市の住民)のオペラをつくりたい。そして彼らと選手、世界の人々の出会いを描きたい』と仰っていました」と発言すると、イケダ氏は『東京オリンピック』(市川崑監督)、『民族の祭典 オリンピア第一部』『美の祭典 オリンピア第2部』(レニ・リーフェンシュタール監督)などを参考にしつつ「勝利だけでなく、大会を通じて“どんな学びがあるのか?”という点に着目しました」と語っていた。
柔道女子70キロ級で金メダルを獲得した田知本選手は「不思議な経験をさせてもらった」と前置きして、白熱の大会を振り返った。「何が何でもほしかった金メダルだったんですが、一番最初に浮かんだのは大会までのプロセス。ひとつずつ頭に浮かんできて、静かに喜んでいました」と当時の心境を明かすと、観客とともに鑑賞した本作を通じて「(オリンピックは)勝敗をとりあげられがちなのですが、もっと色々な意味や価値を含んでいる大会だった」と改めて実感したようだ。
陸上男子400メートルリレーで銀メダルに輝いた飯塚選手と山縣選手は、「(本作を見て)感動しました。普段は知ることのない競技以外の部分を、色々な角度から見ることができました。参加者は選手だけじゃない。リオの地にいた全ての人々が参加者だった」(飯塚)、「オリンピックというのは国、歴史、人の思いが一カ所に集まるもの。その場で走れたことが誇りに思います」(山縣)としみじみ。難民選手団の一員として、柔道男子90キロ級に出場したミセンガ選手は「勝ち負けだけが重要ではないということが再確認できました。難民選手としてオリンピックに参加できたのは非常に重要なことでもありますし、光栄に思っています」と思いの丈を述べていた。
また、2020年開催の東京オリンピックへの抱負を問われると、飯塚選手と山縣選手はともに「個人競技で決勝。リレーでは金メダル」と意気込み、ミセンガ選手は「勿論参加したい。国旗を背負わず戦う難民選手を応援してほしい」とニッコリ。一方、10月に現役を引退した田知本選手は「オリンピック出場という経験を活かせる道を歩み、大会の幅広い意味合いを伝えていきたい」と宣言していた。
第30回東京国際映画祭は、11月3日に閉幕。