ベトナム映画界の新世代を代表するファン・ダン・ジー監督作『大親父と、小親父と、その他の話』が11月2日、第30回東京国際映画祭の「国際交流基金アジアセンター presents CROSSCUT ASIA #4 ネクスト!東南アジア」部門で上映され、ファン監督と出演のレ・コン・ホアンがQ&Aに出席した。
第65回ベルリン国際映画祭コンペティション部門にも出品された青春ドラマ。写真を学ぶため田舎から出てきた青年ブー(レ)、麻薬の売人である同居人タン、ダンサーの女性バンによる奇妙な三角関係を描く。今年の同部門は有名監督の推薦作を特集しており、今作は 「ノルウェイの森」などのトラン・アン・ユン監督による推薦で選出された。
観客から役づくりの過程を問われると、今作でデビューを果たしたレは、クランクイン前に約2年の稽古期間があったことを告白する。「ほとんど脚本を読ませてもらえないですし、都度都度で場面を与えられ、あるいは何も情報がなかったりします。共演する俳優たちと稽古する時もありました」と説明し、「稽古を経ていくうちに、自分のなかで人物像が出来上がっていくんです。そして実際にカメラを回した時は、長い時間をかけなくとも演技ができ、監督を満足させることができました」と、キャラクターが自然と染み込んでいった過程を振り返った。
これを受け、ファン監督は「私は俳優を観察するために、2、3年かけます」と頷き、「その時間は惜しみませんし、急ぐことはありません」と続ける。その理由は「観察することによって、それぞれの美しい面が見えてきます。自分が描く人物を、きれいに表現してくれるようになるんです」と明かし、「映画を作る楽しみのひとつには、人と仕事ができることがあります。映画を作る人々と、家族のような関係性になることもしています。製作に長い時間をかけることはあまり良いことではないかもしれませんが、私にとっては必要なのです」と醍醐味を語った。
また、この日が2度目の上映の機会に。ファン監督は東京観光をしていないそうで、「ベトナムでこの後行われる、『秋の出会い』という重要なイベントがあります。若い映画監督を集め、有名監督、韓国の映画人と交流するのですが、ベトナムから80人、海外から20人が参加します。その準備に追われていて、ほとんどホテルに缶詰。東京を見に行けなくて残念です」と忙殺されている様子。それでも「昨日の夜はとても楽しい時間を過ごしました。是枝裕和監督が指導する、早稲田大学の映画クラブの方々と交流しました」といい、「来年、『秋の出会い』のイベントに来てくれる方が、何人かいると予感しています」と国際交流に期待を込めていた。
第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。