第30回東京国際映画祭の「ワールド・フォーカス」部門で11月2日、スペインの『サッドヒルを掘り返せ』がTOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、監督・脚本・プロデュース・撮影・編集の1人5役を兼ねたギレルモ・デ・オリベイラ監督とプロデューサーのルイザ・カウエルがQ&Aを行った。
セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演のマカロニウエスタンの代表作「続・夕陽のガンマン」(1966)で、クライマックスの決闘シーンの撮影に使われながら、そのまま放置されていたサッドヒルに当時のロケセットを再現しようとする有志たちを追ったドキュメンタリー。オリベイラ監督は、「セルジオ・レオーネ監督は黒澤明の影響を受けているから、その日本で、しかもこんなに大きなスクリーンで上映され夢がかなった」と破顔した。
映画オタクを自任し“聖地巡礼”にもよく行くそうだが、サッドヒルの話も友人から聞き、「なかなか面白そうだと思ったけれど、まさか本当にやるとは思っていなかった」という。だが、撮影許可が出てすぐに現地に向かったところ「皆、美しい志を持った人たちで感動した。当初はYouTubeで流すくらいのつもりだったけれど、プロジェクトがどんどん大きくなっていった」と振り返る。
オリベイラ自身も、同作を含めレオーネ作品の音楽を手掛けるエンリオ・モリコーネや当時の製作に関わった人々の証言も撮影。9カ月の交渉の末、イーストウッド本人にもインタビューを敢行し、オリベイラ監督は「その過程でこの話を聞いて感動し、応じてくれた」と話したが、カウエルが「とにかくエージェントに電話をしまくって、最後はストーカーのようになり、応じなければいけないところまで追い込んだのよ」と冗談めかした。
イーストウッドのコメントは、同作の50周年を記念しサッドヒルで上映会を行った有志たちへのサプライズで効果的に使用されており、オリベイラ監督も「インタビューが取れたのがその1週間前。今でも毎回見る度に涙が出てくるよ」と満足げ。カウエルも、「チャレンジングな企画だったけれど、充実感でいっぱいです」と感慨深げに話した。
第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。