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2017.10.30 [イベントレポート]
「演技経験のない、初めて映画に出る方たちばかりでしたが、真の意味で彼らが俳優になったと思います」10/27(金):Q&A『ライフ・アンド・ナッシング・モア』

ライフ・アンド・ナッシング・モア

監督プロフィール写真

 
10/27(金)、ワールド・フォーカス『ライフ・アンド・ナッシング・モア』の上映後、アントニオ・メンデス・エスパルサ監督をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 
アントニオ・メンデス・エスパルサ監督:また東京に来られて大変嬉しく思います。5年ぶりになりますが、東京国際映画祭に参加できることは大変光栄に思います。ありがとうございます。そして、私の他の作品同様、この作品も思い入れの強い作品です。そして、楽しく作らせていただきました。皆様がどういう風に感じられたか、私も大変興味がありますので、いろいろご質問お願いします。
 
Q:前作『ヒア・アンド・ゼア』(第25回(2012)TIFF WORLD CINEMA出品)と違うのは舞台がフロリダのカルディアというところなのですが、そこを舞台にした理由、5年の間どういうプロセスを経てこの映画に至ったかを教えていただけますか?
 
アントニオ・メンデス・エスパルサ監督:前作『ヒア・アンド・ゼア』は、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ニューヨークに住むメキシコ人が皿洗いをして、彼が国に帰るという物語でした。その作品を製作した理由は、私自身が青年に会って、彼を通して、今まで私が知らなかった世界を知ったので、映画を作りたいと思ったからです。
その後、スペインに戻ったのですがおかげさまで妻が妊娠をいたしまして、私はちゃんとした収入を得ないといけないと思ったところに、フロリダから教職がオファーされ、そこに行ったのです。
アメリカ全土にある大きな24時間営業の有名なスーパーマーケットチェーン「ウォールマート」がフロリダにあって、そこに行きました。
そこで働いている女性たちに、僕はすごく魅力的に感じました。そこで働いているパートタイムの女性たちの物語を映画にしたいなと思いまして、何人かとお会いして話をしているうちに、シングルマザーの方をテーマにして描きたいと思いました。その後、すごく長い期間いろいろとリサーチをして、いろんな方々、女性にも彼女たちの子供たちにもお会いして、この映画を作ることに至ったのです。
 
Q:本当に魅力的な親子も登場しますね
 
アントニオ・メンデス・エスパルサ監督:今回本当にキャスティングは時間がかかる作業になりました。1年半くらいかけました。もちろん主役の親子以外のキャスティングにも時間がかかりました。
映画の冒頭でいろんなアドバイスをくれる老人たちが出演しますけれど、実際その人たちにもお会いしました。それでいろんな人生の話を聞いて感動したので、ぜひこの映画には入れたいなと思って出ていただいたわけなのです。この映画に出ている人たちは皆、演技経験がなく、映画に出るのは初めての方たちばかりです。
彼らにもいろんな人生の物語があって、私に偽ることなく話してくれました。彼らはどんなに暗くつらい思いをしていても、希望は失わないんですね。楽観的といっても過言ではありませんが、その強さに心を打たれました。そして、お母さん役の人も本当に苦労しているのですけども、いろんな話をしてくれまして、一緒に映画を作っていったわけです。
 
Q:出演者には演技指導をしましたか?
 
アントニオ・メンデス・エスパルサ監督:今回一番重要だと思ったのは、演技者の信頼を得ることでした。そして、私が彼らを信頼すること。彼らに映画に出てもらった時点で、私は彼らを信頼していましたが、その逆の方が大変でしたし、とても重要だと思ったんですね。
基本的に私は彼らに脚本を見せませんでした。それで彼らに演技を求めるのですが、撮影の中盤くらいに母親役のレジーナさんが不安になってきたわけです。先が見えないから、かなり怒り出してしまいまして。私を怒鳴りつけたりしたんです。
でも、私にとっては、俳優たちが何も知らないということがとても重要だったんです。それはやはり先がわかってしまうと安心しすぎてしまうと思うんですね。常に彼らには緊張感を持ってもらいたいと思っていましたから。彼女にはすごく怒られてしまったんですが、結果的には良かったと思います。そして最終的に、真の意味で彼らが俳優になったと思います。
私が魔法のようなシーンだなと思ったのは、息子のロバートとレジーナが怒鳴りあったり喧嘩したりしているシーンです。そのシーンは台本がほとんどなく、彼らが考えて自然に言った台詞なんです。
指導のためのワークショップも開いたのですが、素晴らしい演技をしてくれたと思います。
 
Q:監督ご自身には脚本があったのですか?
 
アントニオ・メンデス・エスパルサ監督:実際に脚本は存在しました。ただ、少なくとも俳優たちには見せませんでした。私にとって、脚本は地図や指標みたいなものです。
撮影中は、目の前で起きることに対してそのままの流れで撮影することもありました。例えば、男性がロバートに様々なアドバイスを与えるのも予想していたので、脚本には一行くらい書いて、男性には自由に話してもらいました。あと、駐車場で神父さんが現れたことも脚本にはありませんでした。たまたま我々が撮影しているところに現れて話し始めたのです。その時ちょうどお昼休憩で録音係がいなかったのですが、どうしてもその瞬間が撮りたかったので、もう一度神父さんに来てもらって撮影をしました。でも、やはり一度目ほど自然ではなくてとても残念でした。
撮影していると私は目の前のことしか見えなくなってしまうので、1つの地図、指標として脚本は使っています。
そして実際の撮影のプロセスは、私自身がこういうシチュエーションでこういうシーンだからねって説明してから、彼らに任せています。そういった意味ではいろんなハプニングが起こります。
私は常に目の前のことに柔軟性を持って撮影を進めていきたいと思っていますが、同時にそれが真実かどうか、説得力があるかどうかを判断しながら進めていきます。それと同時に俳優たちにも聞きます。私の言った通りにもやってほしいのですが、彼らの意見も尊重しますよ。
 
 
前作『ヒア・アンド・ゼア』上映時のアントニオ・メンデス・エスパルサ監督Q&Aの模様はコチラ

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