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2017.10.30 [イベントレポート]
イサーン地方描いたタイ新鋭監督 軍事政権下の映画界「前よりよくなっている」 『4月の終わりに霧雨が降る』
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   第30回東京国際映画祭の「国際交流基金アジアセンターpresents CROSSCUT ASIA #4 ネクスト!東南アジア」部門で、『4月の終わりに霧雨が降る』が10月30日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、タイのウィットチャーノン・ソムウムチャーン監督がQ&Aに登場した。

 失業して故郷に帰った青年が織りなすドラマを、監督自身の家族へのインタビューなどを交えながら描いた実験的作品。タイ・バンコクで職を失って東北部イーサン地方に帰郷したナムは、高校時代の友人の結婚式で、かつて思いを寄せていた同級生ジョイと再会する…。日本ではアジアフォーカス・福岡国際映画祭2012で初上映された。

 本作が長編デビューで、脚本も手掛けたタイのウィットチャーノン・ソムウムチャーン監督は製作の経緯について「この前にショートフィルムを撮りました。ドキュメンタリーの形式でフィクションを入れたら、面白いと思ったんです。製作費の制限もあるので、自分の伝えたいことを最大限に伝えるにはどうすればよいかを考えました。時間軸がバラバラにした『ザ・ミラー』という小説も参考にしています」と明らかにした。

 カンヌ国際映画祭でタイ初のパルムドールを受賞した「ブンミおじさんの森」のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の一押し作品。映画の中に映画を挟むなど随所に実験的な試みを行っている。「冒頭でも映画の撮影に出くわしますし、映画の中で映画を撮るというテクニックはみなさん使っているけども、それが面白いと思いました。メタファーなども入れていますが、全体的には実体験が基本になっています。いろんなシーンを削除したり、並び替えたりして、編集は苦労しました」。

 舞台はイサーン地方については「コンケンという中規模の経済都市で、中心部を離れると、畑があって、都会と田舎が混ざっている。ある種のギャップを表現したかったんです。共通語と方言が混じっていて、それが見えるのが食卓でのシーンです。故郷についての本を書いているような感じでした」と振り返った。

 印象的なエンディング曲は、高校時代を過ごした90年代に流行った歌謡曲だそうで、「題名もタイの歌謡曲から引用しました。4月はタイでは新年に当たり、学生だったら、故郷に帰ってくる特別な月なんです。私自身は歌うし、音楽もやります。高校のときには、カラオケが流行ったので、ノスタルジーも感じます」と話していた。

 タイでは2014年にクーデターが起こり、軍事政権が誕生。「映画が作りにくくなったことはないか?」と聞かれると、「前よりは状況はよくなっていると思います。映画はこうでなければいけないという風も強制もなく、いろいろなスタイルで撮れるようになっていると思います」と終始、穏やかな口調だった。

 第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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