森見登美彦氏のベストセラー小説を、湯浅政明監督がアニメ映画化した「夜は短し歩けよ乙女」が10月26日、第30回東京国際映画祭のJAPAN NOW部門で上映され、湯浅監督が東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズでのティーチインに臨んだ。
映画は、京都が舞台のファンタジックな青春恋愛物語。主人公の“先輩”が、思いを寄せる“黒髪の乙女”に、「なるべく彼女の目にとまる」ことを目的とした「ナカメ作戦」を実行していく。
劇中で起こるさまざま事件や出会いは、すべて一夜の出来事としてつづられる。失踪感あふれる映像や、ストーリー展開に対し「若い人の体感速度を表現しているのか」と問われた湯浅監督は、「たくさんの意味があるのですが、単に楽しい時間は早く過ぎるとか、若い時は時間があり、歳をとると時間が少なくなるという意味もあります。それともう一つ。人に時間をあげる人は、人生が豊かになって、時間が長くなるという考え方があって」と演出の意図を明かした。
「時間の進み方の世代間ギャップ」の例として、同部門のプログラミング・アドバイザーを務める安藤紘平氏が小津安二郎監督の「東京物語」をあげ、「(本作は『東京物語』と)同じように、世代間の時間の進み方にギャップがある。湯浅さんの作品は、若い人の時間の進み方にも希望や楽しさを感じるように作られている」と指摘。湯浅監督は、「少し似ていると思う。(黒髪の乙女は)原節子のように、お年寄りの方々のなかに自分から入っていって、自分の時間を与えることができる人は、彼らと仲良くなり、彼らも幸せになる。逆に最初の頃の先輩は、自分の利益のためだけに振るまっているから、時間が進まない」と解説した。
質疑応答コーナーでは、「小説を映像化する際、アイデアはどう生まれる?」という質問が上がった。湯浅監督は「小説、漫画、映画、アニメは違うものだと思っています。だからそのまま言葉や絵をなぞっても、同じものはできない。一番大切にしているのは、見た時、読んだ時に、自分が感じたことを映像化しようと考えています」と語った。
今年4月に本作、5月にオリジナル劇場アニメ「夜明け告げるルーのうた」を発表し、「夜明け告げるルーのうた」は、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭2017において長編部門のグランプリにあたるクリスタル賞に輝いた。精力的な活動を続ける湯浅監督は、現在、永井豪氏の漫画「デビルマン」をアニメ化する「DEVILMAN crybaby」の制作真っ只中。「映像化しにくい作品と言われていましたが、なんとかうまく作って、来年Netflixで配信されます。制作はもうちょっとで終わるところなので、今大忙し」と苦笑いを浮かべ、「面白くなっているので、是非!」と呼びかけた。
第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。