アレハンドロ・ホドロフスキーの最新作で、第30回東京国際映画祭の特別招待作品の「エンドレス・ポエトリー」が10月26日、東京・EX THEATER ROPPONGIで上映され、来日した主演のアダン・ホドロフスキーが観客からの質問に答えた。
「エル・トポ」「ホーリー・マウンテン」などでカルト的人気を誇る鬼才の自伝的作品「リアリティのダンス」の続編。家族揃って故郷トコピージャから首都サンティアゴへ移住したアレハンドロ青年が、詩人エンリケ・リンやニカノール・パラら、若きアーティストと出会い、自分が囚われていた現実から解放される様を描く。
主人公の青年アレハンドロを、ホドロフスキー監督の末の息子であるアダンが演じた。「父から聞いていた様々な話を(チリの)現場に行って思い出し、作品はより美しいものになった」と自信を見せる。前作に引き続き、長男ブロンティスがアレハンドロの父親役、衣装をホドロフスキー監督の妻のパスカルが担当。一家総出の現場で、アダンの妻の元恋人も出演したそう。ホドロフスキー監督の演出については、「父は人の意見は聞かずに、すべての動きを決めている。しかし、私がその通りにできないと2テイクしたところで怒って『後は自由にやれ』という風になる。そこでの自分の即興を気に入ってくれて、かなり残してくれている」と話す。
子供時代のホドロフスキー家での生活を問われると「全く普通ではなかった」ときっぱり。監督は5人の息子がおり「食事の前に男の子は椅子の上に立って、詩を朗読しなければならなかった。弟はスープにおしっこをしろと命じられたことも」と明かす。そのほか「靴がほしかったら、30軒位まわってとことん自分に合うものを探した」「音を立てないように歩く、忍者のような修行もした」と様々なエピソードを披露。スピリチュアル、アート、あらゆる宗教について常に勉強をしていたと、家庭でのホドロフスキー監督の姿について語った。
アダンは、本作で音楽も担当。今作のためにパリのスタジオでミシェル・ルグランが使ったピアノで作曲したそうで「父はバイオリン、ピアノ、フルート、オーボエを中心とした楽曲、サティ、ベートーベン、ストラビンスキーを好みます。『ホーリー・マウンテン』『エル・トポ』で使った音楽も参考にした」という。ホドロフスキー監督が発表したすべての作品が一続きの1本の映画だと考えており、「父はもう続編を考えている。パリからメキシコに行く話です。資金が必要なので、億万長者は父に連絡してほしい」と呼びかけると、ひとりの観客が給料を渡したいと申し出て、アダンが自身のメールアドレスを読み上げる一幕も。最後に観客に向け「人に与えるものは実は自分に与えているものなのです」と哲学的なメッセージを残した。
「エンドレス・ポエトリー」は、11月18日から東京・新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、UPLINKほか全国順次公開。第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。