“映画の父”リュミエール兄弟が製作した作品1422本から厳選された108本で構成された映画「リュミエール!」が10月26日、第30回東京国際映画祭の特別上映作品として上映され、ティエリー・フレモー監督、日本語吹替版ナレーションを務めた落語家の立川志らくがTOHOシネマズ六本木ヒルズでの舞台挨拶に立った。
本作は、ルイ&オーギュスト・リュミエール兄弟が1895~1905年の10年間に製作した作品群から、カンヌ国際映画祭総代表であり、リヨンのリュミエール研究所のディレクターを務めるフレモー監督がチョイスした108本で構成し、4Kデジタルで修復したもの。脚本・編集・プロデューサー・ナレーションも兼任したフレモー監督は「リュミエール兄弟は映像を撮るというだけではなく、初のフィルムメーカーでもある。映画の起源はどういうものなのか、2人が撮り上げた映像がいかに美しいかを知っていただきたい」と思いの丈を述べていた。
映画作品のナレーションを初めて経験した志らくは、「(リュミエール兄弟は)名前は知っていたけど、見たことがなかった。チャップリン以前の作品だから、記録映像みたいなものなのだろう」と想像していたようだが、「ビックリしましたね。構図が印象派の絵のように美しくて、きちんと演出をされている。仕事するのを忘れて見続けてしまいました」と予想を覆されたようだ。フレモー監督には質問があったようで、「エジソンが映画に関わっていたと知っている日本人はかなりいます。しかし、リュミエール兄弟が“映画の父”であると認識している人はほとんどいない。フランスでも日本と同じなのでしょうか?」と問いかけた。
「(フランスでは)シネマトグラフを発明したということでは有名です。ただ2人の世界や作品はあまり知られていない。本作には、膨大な作品で築かれた“大きな山”に招待するという意図がある。最終的には山頂まで登ってほしい」と切り返したフレモー監督。さらに「エジソンは、技術的に映画を発明できたが、キネトスコープを箱型にしてしまった。しかもお金をとる。これはアメリカ流なんです」とエジソンが“映画の父”になれなかった理由を説明。「一方、リュミエール兄弟は大きなスクリーンに投影し、群衆の前に映し出した。これが正解だった。同じ空間のなかでイメージを共有し、気持ちをひとつにする。つまり“体験”をさせてくれたんです」と“運命の分かれ道”があったことを説明した。
志らくは、フレモー監督の論説に「この作品をきっかけに(映画の父は)エジソンではなく、リュミエール兄弟であるということが広がればいいですね」と納得の表情。「(本作は)リュミエール兄弟以前、映写機を発明しようとして努力された方々にも敬意を表したものでもある」と言葉に熱を込めたフレモー監督は「リュミエール兄弟の後には、映画の発明家というものはいないんです。2人が作品をつくった時点で、映画は出来上がってしまった。彼らは最後の発明家にして、最初の映画監督なんです」と話していた。
「リュミエール!」は、10月28日から東京都写真美術館ホールほか全国で順次公開。第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。