第30回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されたカザフスタン映画「スヴェタ」が10月27日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、来日したジャンナ・イサバエバ監督、主演の女優ラウラ・コロリョバ、俳優のロマン・リスツォフが会見した。
ほぼ全編が手話で進行し、生きるために手段を選ばない主人公の行動を鋭い視点で描き出す。ろうあ者が勤務する工場で働くスヴェタは、突然リストラの対象とされてしまう。家のローンに苦しむ彼女は神をも恐れぬ行動に出る。
音声でのセリフが全くないという、難しい作品にチャレンジしたイサバエバ監督は、「映画に出られる人がもし見つからなければあきらめるつもりでしたが、実現することができました」と感慨深げに語り、「プロの俳優に説明するのも難しいのに、みな素人で、ろうあ者という初めてのことばかりで、非常に困難を伴う撮影でした。しかし、撮影が進むにつれ、ろうあ者の世界を次第に理解することができました。これまでろうあ者は社交的ではないと思っていましたが、実際に付き合うと朗らかで愛すべき方々ばかりでした」と述懐する。
そして、「ろうあ者の中にも話せる人がいます。彼女は読唇術もでき、短大卒業後は、総合大学で勉強しています」と主演女優のコロリョバを紹介。普段はろうあ者のための文化会館に勤務し、歌唱クラスの担当をしているというコロリョバは、「小さいころから女優になるのが夢でした。33歳になって夢が実現するとは思いませんでした。施設に訪ねてきた監督から出演のオファーが来て驚きましたが、この映画に出ることができて非常に幸せです」と自身の声で喜びを語る。
夫役を演じたリスツォフは、コロリョバの手話を介して自己紹介。「私も俳優になりたかったのです。もう一人の候補者がいたので、さまざまなことで自分が評価され、出演が決まった時はとてもうれしかった」とコメントした。
そのほか、イサバエバ監督は、ろうあ者しか出演しない映画ということで資金集めに苦労したこと、自国ではろうあ者を含めた障害者向けの福祉制度が充実していないことについて言及。俳優ふたりは、「カザフスタンもよい国ですが、日本はスーパー!」(コロリョバ)、「できたら日本に残りたいくらいです」(リスツォフ)と初来日を満喫していた。
第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。