カメラマンの男。偶然知り合った女と、その弟の3人で奇妙な共同生活が始まる。心を病んだ弟は部屋から外に出られず、男はある手段を思いつく…。傷ついた人々に優しい視線を投げかけ、映像が持つ力を改めて教えてくれるヒューマン・ドラマ。
長いトンネルを抜けるオープニングのシーン。続いて、新規開店のスーパーに無言で並ぶ人たちの顔、顔。市井の人々の生活感がリアルに感じられる。物語が動きだす前に、日常の光景を映画の快感に置き換えることのできる監督の才能に気づかされる。やがて、主人公のカメラマンは女と出会い、その弟のための行動が物語を動かしていく。主人公の行為は、映像の持つ力を信じる行為であるがゆえに、映画ファンの胸を打つだろう。主人公のまなざしは、世の中が映像で溢れる現在だからこそ重要な意味を持つ。あらゆる光景は映画となり、あらゆる映画は社会となる。本作は、日常にはびこる憎しみや恐怖、孤独や暴力などに対するリアクションのつもりだと監督は語るが、映像や映画が希望になりうるというメッセージは、見るものの心を温めてやまない。
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