ジョージアの山岳地帯にて、村に伝わる癒しの泉を守る一家。息子たちは独立し、父は娘のナーメに後を託すが、ある日泉の異変に気付く。ファンタジーと現実社会が溶け合い、幽玄で繊細な映像美が心を揺さぶる現代の寓話。
日本で劇場公開された『みかんの丘』(13)や『とうもろこしの島』(14)、あるいは多くの映画祭で受賞した『The House of Others』(16)など、ジョージア映画は近年世界的に存在感を増している。伝統的に高度な撮影の水準がジョージア映画の個性のひとつとされるが、本作もその系譜に位置するように息をのむような映像美で溢れたドラマである。癒しの泉を守る一家という神話的な存在を現代社会に蘇らせ、スピリチュアルな領域と現実世界の境目はあいまいになっていく。ヒロインはある選択を迫られるが、果たして現代社会には無私を貫くだけの価値があるだろうか。そして現代人が自らの行為に払うべき代償とは何か。本作はあくまで控え目に、しかし確実に問いかけてくる。
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