1943年夏、イタリアのピエモンテ。大邸宅の居間でミルトン、ジョルジョとフルヴィアの3人の男女が仲睦まじく会話をしている。ミルトンはフルヴィアを愛しているが、フルヴィアの本心は分からない。やがてレジスタンス軍に参加したミルトンはフルヴィアがジョルジオと関係を持ったことを知り、彼を見つけずにいられない。しかしジョルジオはファシスト勢力の捕虜になっていた。
原作者ベッペ・フェノリオが自らの経験をもとに執筆した「Una Questione Privata(個人的な事情)」(本作の原題でもある)は、20世紀イタリア文学の最高傑作に挙げられる小説であり、レジスタンス兵士の青年が友情と愛に悩みながら戦火をくぐる物語は世代を越えて読み継がれ、若者のバイブルとみなされている。巨匠タヴィアーニ兄弟は、愛や嫉妬に突き動かされる個人の運命は、非常時においては共同体の運命と無関係でいられないという現実を見据えてドラマを紡ぐ。そのタッチは繊細にして荘厳であり、霧の中の行軍を美しく捉える一方で、戦争がもたらす狂気を哀しく描き出す。タヴィアーニ美学があらゆるシーンに染み入った、珠玉の逸品である。