フロリダで母親と幼い妹と暮らす高校生のアンドリューは、大人の入り口に立っている。自分の人生を優先する母と服役中の父を持つ孤独なアフリカ系アメリカ人少年に、どんな選択肢があるのだろうか?
家庭には問題があり、家の外では依然として黒人差別がはびこる環境の下で、少年が何とか成長していこうとする姿を丁寧に描くエモーショナルなドラマである。エスパルサ監督は前作『ヒア・アンド・ゼア』(2012/カンヌ映画祭批評家週間グランプリ受賞作/同年TIFFでも上映)で見せたリアリズム演出に磨きをかけ、観客をたやすく映画の中に惹き込んでいく。地域の住民や司法関係者に入念に取材を重ね、出演者の選定に1年をかけ、実人生に限りなく近いフィクションを作る準備が進められた。脚本はあったものの、実際には出演者と作品を作りながら物語を発見していったという。その結果、長廻しのワンシーンワンカットを多用しつつ、物語の進行はスムーズという本作独自のテンポが生まれている。映画は様々な社会問題を内包し、どん詰まりになってしまったアンドリューの行動に焦点を絞っていく。描かれる状況は厳しいものの、フロリダの太陽も手伝って映画に暗さはなく、監督のヒューマニズムに胸を打たれずにはいられない。サンセバスチャン国際映画祭コンペティション作品。