撮影入り直前、死んだと思われていた前妻が姿を現す…。
A・デプレシャン監督の新作は、期せずして奇妙な三角関係に陥った映画監督の日常と、彼の創造する映画とがモザイク状に組み合わさった愛のドラマである。若き外交官のイヴァンは世界中を飛び回るが、その意味を理解していない。イヴァンの物語を映画にするイスマエルは、自分の人生の意味を理解していない。死んだと思っていた妻が20年ぶりに帰ってきたのだから。イスマエルは動揺し、執筆する脚本も混乱していくが、それでも物語の断片をひとつにしようともがく…。
デプレシャン監督はひとつひとつのシークエンスに力を込め、その繋がりよりも全体の強度に重きを置き、いくつかの死の形を通じて強く生を肯定する。マチュー・アマルリック、シャルロット・ゲンズブール、マリオン・コティヤールら人気俳優の共演もさることながら、虚実のコラージュから紡がれる命の実感を堪能したい。カンヌ映画祭のオープニング作品(カンヌでは114分の短縮バージョンが上映されたが、TIFFでは134分の「ディレクターズ版」を上映)。
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