3児の母であるオームは、自らのマンションをシェルターとして家族と隣人を市街戦の脅威から守っている。外の広場はスナイパーに狙われ、爆撃が建物を振動させ、さらに強盗が押し入ろうとする。果たしていつまで持ちこたえられるだろうか…。
シリアの内戦を一般市民の目から見た緊迫のドラマ。監督は2012年に友人の父親がアレッポの住居から3週間出てこられないという話を聞き、危機感を募らせて早急に映画化する手段を講じたという。つまり、舞台をアパートの一室に限定し、24時間の出来事とした。脚本の信ぴょう性をシリア難民やシリア系映画人に読んでもらい、活火山の上に暮らすような家族の物語を仕上げていった。暴力を視覚化した衝撃描写でいたずらに煽る手法は避け、聴こえてくる音と住人の反応によって恐怖を伝える演出は、かの地の戦争に実際に立ち会っているかのような臨場感を醸し出す。血も凍る戦慄のドラマである。しかし、そのサスペンス性は映画としての見応えに繋がり、ベルリン映画祭パノラマ部門で見事観客賞に輝いている。