台湾行きを願うフイリンは貯金を失った結果、奇妙な仕事に手を出す。それはロヒンギャ移民に対する残虐行為に関わるビジネスだった。そんな彼女にとって一筋の光は、フイリンを昔の知り合いだと信じている若い病院スタッフのウェイだった…。
現代マレーシアの転移(ディスプレイスメント)と倫理観についての野心作である。ヨウ監督は新作の舞台を、多文化多言語が自然に同居したはずのマレーシアとタイの国境付近の街に設定した。そしてその「理想郷」が現在ミャンマーから逃れるロヒンギャの人々をいかに扱うかを描き、現状に対して問題を提起する。自国マレーシアのみならず、アジア全域の歴史や文化に意識を巡らす懐の深さがヨウ監督を大器ならしめているが、その真骨頂は社会問題と詩情溢れるラブストーリーの融合である。監督の前作に続いての主演となるダフネ・ロー演じるヒロインは思いもよらず人身売買ビジネスに関わるが、やがて物語は時空と生死の境を越え、ドキュメンタリーとフィクションの境も越える。そして「ロヒンギャの来世」はより身近な存在となっていく。真摯な哀悼の念と、未来への希望の祈りを込めた入魂の1作である。
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